日本各地いたる所に温泉がありますが、その数は3000箇所以上とも言われます。古くから多くの日本人に親しまれ、最近では外国人の姿も見かけるようになりました。温泉の定義は「地中からゆう出する25度以上の温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)」のことを言います。また、25度以下でも、「溶存物質、遊離炭酸、ストロンチウムイオン、リチウムイオン、バリウムイオン、フェロ又はフェリイオン、第一マンガンイオン、臭素イオン、水素イオン、沃素イオン、ふっ素イオン、ヒドロひ酸イオン、メタ亜ひ酸、総硫黄、メタほう酸、メタけい酸、重炭酸そうだ、ラドン、ラジウム塩」のうちひとつでも含まれていれば、温泉に分類されます。
温泉には昔から病気や怪我などに良い効果があるとされ、「湯治」というかたちで利用されてきました。温泉の効果は、温泉成分による科学的効果のほか、神経系や循環器系に作用する温熱効果や、腰や関節への負担を軽減する浮力効果などの物理的効果なども相乗的に働いて、人間の体に作用します。
温泉に行けば、脱衣場や入り口などに、その温泉の効能や泉質などについて書かれたものが備え付けられていますので、この温泉が何に効くのか確認することができます。この表示は、都道府県で登録された分析機関によって科学的な分析が行われた結果が表示されています。湯治を目的としているのであれば、その温泉がどのような病気や症状に適しているか、またどのような方法で入浴や飲泉をすれば良いのかなどを、あらかじめ知っておくと良いと思います。
ところで、温泉はどんな病気にも良いのかというと、そういうわけではありません。逆に温泉療養をしていけない病気ものもあります。療養をおこなって良い病気や症状のことを「適応症」といいます。それに対し、温泉療養をしてはいけない病気や症状のことを「禁忌症」といいます。
・一般的な適応症
一般的な適応症として、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進など、主に慢性的な病気や症状が該当します。
泉質別で見ますと、
塩化物泉は、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病に効果があり、飲用すると慢性消化器症、慢性便秘に効果があります。
炭酸水素塩泉は、きりきず、やけど、慢性皮膚病に効果があり、飲用すると慢性消化器症、糖尿病、痛風、肝臓病に効果があります。
硫酸塩泉は、きりきず、やけど、慢性皮膚病に加え、動脈硬化症にも効果があり、飲用すると、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、痛風に効果があります。
二酸化炭素泉は高血圧症、動脈硬化症、きりきず、やけどに効果があり、飲用すると、慢性消化器症、慢性便秘に効果があります。
含鉄泉は月経障害に効果があり、飲用すると、貧血に効果があります。
硫黄泉は、慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病、さらに加えて硫化水素型は、高血圧症、動脈硬化症に効果があり、飲用すると、糖尿病、痛風、便秘に効果があります。
酸性泉および含アルミニウム泉は、慢性皮膚病に効果があり、飲用すると、慢性消化器症に効果があります。
放射能泉は、痛風、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性皮膚病、慢性婦人病に効果があり、飲用すると、痛風、慢性消化器症、慢性胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛に効果があります。
ただし、これらの効果は即効性があるというものではなく、2〜3週間の温泉療養を行う際のものです。
温泉療養における注意点は、最初の数日の入浴回数を1日あたり1回程度とし、入浴時間は入浴温度にもよりますが、湯あたりしないように、初めは3分から10分程度とします。その後は1日あたり2回ないし3回までとし、慣れるにしたがって、入浴時間を延長してもよくなります。入浴後は、身体に付着した温泉成分を水で洗い流さないようにします。そして、温泉療養のための必要期間は、おおむね2ないし3週間を適当とします。
・一般的な禁忌症
へんとう腺炎、肺炎、流感、などが急性疾患、(とくに熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期)が該当します。抗生物質を使用する病気や症状は殆ど温泉療養に適さないと考えて良いでしょう。 温泉療法を行う場合は、温泉の知識を持った「温泉療法医」に相談されるのが良いかもしれません。
また、泉質別に禁忌症を見てみると、
塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉は入浴に関してはとくになく、飲用する場合、腎臓病、高血圧症、その他一般にむくみのあるもの、甲状腺機能亢進症のときはヨウ素を含有するもは飲用できません。
二酸化炭素泉は入浴に関してはとくになく、飲用は下痢をしているときは飲用できません。硫黄泉および酸性泉は、皮膚、粘膜の敏感な人、特に光線過敏症の人、硫化水素型は高齢者の皮膚乾燥症の人は禁忌症とされ、飲用に関しては硫黄泉は、下痢のときは飲用できません。
飲用する場合は飲用の許可があることを必ず確認しましょう。そして、できる限り温泉について専門的知識を有する医師の指導を受けるのが望ましいと思います。また、飲用には温泉湧出口の新鮮なものを用い、1回の量は一般にコップ1杯程度とします。ただし、酸性泉やナトリウム塩化物泉などは泉質濃度によって減量や希釈を行います。飲む時間は、食前30分〜1時間前がよく、夕食後から就寝前はなるべく避けるのが良いとされています。